バイトテロの原因はワイドショー。これはSNSによる政治・芸能スキャンダルのコモディティ化だ

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くら寿司のアルバイト店員によるイタズラ動画の拡散と、それに対する法的措置で一躍話題になり、「バイトテロ」なんていう新語まで生まれた今回の事件。

あたかもSNS時代の若者による新しい不祥事のように報道されていますが、僕はそうは思いません。

飲食店の1店員が食材をゴミ箱に入れて、その食材を使った料理を提供したというのは、ハッキリ言って大事件ではありません。国民生活に大きな影響を及ぼすとか、国際問題に発展したりはしませんから(もちろん、許されてはならないことですが)。

でも、こういうしょーもない不祥事を延々と報道し続けるテレビ番組がありますよね?

そうです。ワイドショー。

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悪いヤツを叩きたい!他人の不幸は蜜の味!

やれ政治家の不適切発言だ、芸能人の不倫だと、とても重要とは思えない報道をやたら繰り返すワイドショー。

でも、未だにそんな番組が多いのは視聴率が取れる=見たい人が多いことの証拠です。

  • 他人の不幸は蜜の味
  • 正義の名の下に、悪いヤツを叩いてスッキリ
  • 悪いヤツを見て、「自分はなんて正しいんだ!」と満足

美しくないですけど、人間ってそういう本能あるんですよね。

ワイドショーは誰かの失敗を利用して、この本能をくすぐって快楽を与え、視聴率を稼ぐ。だからなくならない。

結局、バイトテロの実行者というのは不祥事を起こした政治家や芸能人と同じ立ち位置であり、「取材」と「報道」という報道機関だけが特権的に持っていた能力が、スマホとSNSにより1個人の手に渡った、ということです。

視聴率を目当てに報道するワイドショーと同様、バイトテロ投稿を目にしたSNSユーザーも自らの「いいね」を増やすために拡散する。広く拡散されたということは、その投稿に興味を持つ人がそれだけ多いという証拠。

「そんなことで”いいね”増やしてどうする…」と言いたくもなりますが、ワイドショーを放送して視聴率を稼ぐことと本質的には同じことです。

これが「SNSによる政治・芸能スキャンダルのコモディティ化」。

そして、実行者の視点に立つと、しょーもない不祥事を起こして拡散されることで、一般人が政治家や芸能人レベルの注目を浴びられるようになった。バカげてますが、イタズラで注目を浴びたい=承認欲求と考えれば説明が付きます。

イタズラは本能。なくすことはできない。

いつの世も、いたずらっ子はいます。もはや本能と言ってもいいでしょう。

子供の頃に泥遊びをするとか、好きな子にちょっかい出すとか、尾崎豊的に学校の窓ガラスを割るとか、悪いことでバレたら怒られることでも、やりたくなる人はいるんです。

自らの存在感を示すために、イタズラをする。

良い大人になっても、スリルのために万引きするとか、爆弾の原料作っちゃうとか、そういう人いますよね(※繰り返しますが、これらは許されてはいけない行為です)。

やっちゃいけないことを敢えてやることで、刺激を味わう。

大半の大人は理性で抑えられているわけですが、中にはそうでもない人もいる。若いバイト店員ならなおさらです。

そう考えると、バイト店員の中にバイトテロ予備軍が混ざっていること自体は不思議なことではありません。

世の中に食品を扱うバイト店員が何万人いるか知りませんが、SNSで炎上したのはせいぜい100人ぐらいでしょうか?

超エリートであるはずの政治家による不適切発言の発生率と比べれば、微々たるものでしょう。

そう考えると、バイトテロ予備軍を減らそうというアプローチには無理があります。

正社員によるバイト店員の監視強化だったり、「ポケットのない制服」によるスマホ持込禁止といった対策で、その場・その瞬間における発生を抑えることはできるかもしれませんが、代わりに監視の緩い場所やタイミングで発生するだけのことでしょう。

バイトテロも本物のテロも一緒。話題にすればするほど過激になる

バイトテロ予備軍を減らすことは難しいですが、だからといって過度に話題にすると、事態は悪化することでしょう。

ここまで書いてきたとおり、バイトテロを起こすのは承認欲求を満たしたいから。

話題になればなるほど、「大きなコト」を成し遂げたとして満たされる。

もはや本物のテロリストみたいな考え方ですが、本質的には同じ。

すると、今後はおそらくこんな流れになります。

  • バイトテロの模倣が発生
  • 並のバイトテロが当たり前に→拡散力が落ちる
  • もっと拡散されたい!→過激なバイトテロが発生
  • どんどんエスカレート

YouTuberのイタズラ動画・過激動画のエスカレートを見ると、この展開は容易に予想できます。

しかし、ワイドショーに根強い視聴者が残っていることから分かるとおり、バイトテロを見ることを楽しみにしている視聴者も多いはず。

YouTubeが過激な動画を規制し始めたように、主力SNSがイタズラ動画を禁止することも考えられますが、おそらく規制の緩いSNSに流れるだけで解決にはならないでしょう。

解決策:承認欲求を手軽に満たせる、代わりの手段

解決は難しそうですが、解決策がないわけではありません。

ワイドショーとバイトテロSNS拡散の類似性を挙げてきましたが、実はひとつだけ決定的に違う点があります。

それは、有名人のスキャンダルは隠れてやったのがバレているのに対して、バイトテロは承認欲求を満たすために自ら発信しているということです。

要は、注目を浴びるための、手っ取り早い方法としてバイトテロを選択しているわけです。

「もっとマトモなことで注目されろよ!」と言いたくなりますが、悲しいかな「良い話」よりも「芸能人の不倫」の方が世間で話題になるのが現実。人間の本能をくすぐり、この現状を作り上げたのはワイドショーです。

バイトテロが拡散されれば一発で注目を浴びますが、バイト店員のような一般人が「マトモなこと」で注目を浴びようとしても、大災害の現場で英雄的な人命救助でもしない限り難しいでしょう。

かといって、真っ当な方法でコツコツ何かを積み上げて有名になるのはしんどい。なるべくラクしたい。それもまた本能です。

なので、ラクに承認欲求を満たせる手段があれば、バイトテロに頼ることはなくなります。

「良いこと」に特化して拡散されるSNSでもあればいいんですが、ワイドショーが幅を利かせている現状から考えて、おそらく拡散力は小さいでしょう。

「承認欲求メーター」が100になったときにバイトテロが発生するとしたら、たとえばバイト店員に対して上司がねぎらいの言葉をかけるとメーターの数字が1減るかもしれないし、客が「ありがとう」の一声をかけることで0.1減らせるのかもしれない。

こういう小さな心がけで、少しずつ発生率を抑えていくしかないんじゃないでしょうか。